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フォーサウザンド山

標高の高さ故に一年を通して雪が見られる過酷な土地”フォーサウザンド山”。

入植を果たした公国民たちの間に伝わる、昔話をご紹介しましょう。

村での入植生活が安定してきた頃のこと、

どこからともなくヤギによく似た動物、ヘンイヤギが現れるようになった。
これで獣肉が手に入ると喜んだ入植者たちだったが、ヘンイヤギは何をしても傷つかず、

追い詰めると縦横無尽に飛行して逃走するために捕らえることさえかなわなかった。
そんな時、困惑し攻撃の手を止めた入植者たちの中から、一人の老婆が一歩進み出た。
その手に握られていたのは彼らがヘンイヤギから守ろうとしていた氷草の束。
差し出された草を食べたヘンイヤギは老婆に礼を言うかのように一声鳴くと、雪山へと消えていった。
翌朝老婆が目を覚ますと、とても癖が強くしかし食欲をそそる強烈な匂いが周囲を取り囲んでいた。
老婆は家から出ようとするも、扉は頑として開かない。

窓から外の様子をうかがえば、見えるはずだった景色は山のようなチーズに遮られていた。
異変を察した入植者たちによって老婆が救出された後、

まとめて回収されたチーズは思わぬ臨時の食料として入植者たちを大いに助けた。
その後もヘンイヤギは定期的に集落に現れ、その度に草を与えた者の家をチーズで取り囲んだ。
食べきれないほどの量が溜まったチーズは倉庫を圧迫し、

ついには交易商品として二束三文で売却されることになった。
癖の強すぎる風味は食料の乏しい雪山でもなければ、

誰も好き好んで食べようとはしないだろうと集落の人々は考えたのだ。
しかしその予想は大きく裏切られることとなる。
はじめは物珍しさに、続けてその風味の中毒性に、惹かれて購入するものが続出。

そうしてヘンイヤギチーズは瞬く間に”雪山の珍味”として知れ渡り、価格と需要は大幅に上昇した。
処分に困るほどの量が溜まっていたチーズだったが交易品としての需要が高まると一転、

定期的に一定量しか得ることの出来ない性質により市場は常に供給不足に悩まされることとなった。

チーズをもたらすヘンイヤギがどこから現れるのか調査しようと、追跡を行った研究者がいた。
彼はヘンイヤギを追って雪を掻き分け山へと入ったが、

しばらくした後、雪山の中で荷物も持たずさまよっている姿で発見されたという。

サケトチーズ
開拓村

公国の民は過酷な雪山にも勇敢に立ち向かい、

見事入植を果たした。
火山活動によって湧き出す温泉のそばに集落を作り、
氷点下の気温でも成長を止めない

氷樹と氷草を持ち込み育て、

資源の自給を確保し長期の居住を可能としたのだ。

サケトチーズ開拓村.png
空中のブランコ.png

空中のブランコ

フォーサウザンド山で空を見上がれば、

空から吊り下げられた

巨大なブランコのようなものが見える時がある。
そのブランコは大抵の場合
ただ揺れているだけだが

極稀に人が乗っているように見える時もある

と言われている。

「あの姿はサーラちゃんさまに違いない」

とは、目撃者の談。
どのような因果関係かブランコが空に見える時、

ヘンイヤギは現れない。
「空を飛んでいたドラゴンが

空中のブランコに衝突して墜落した」

という笑い話は、

サケトチーズ開拓村出身者の定番ジョークである。

サケトチーズ温泉

開拓村のほど近くに湧き出す天然の温泉。
雪山では貴重な熱源として住民の生活を支え、

観光資源としても重要な価値を持っている。
その湯にはアルコール成分が含まれており、

周辺環境の寒さも合わせ、

ここでの入浴で得られる快感は

一度味わえば他の温泉では満足できなくなるほどだ

と言われている。
地表に湧き出す源泉は沸騰するほど高温。

ある程度の距離を流れ、雪や冷気で冷やされる

ちょうど良い位置に浴場が設置されている。
地元の住民はこの源泉を料理に利用するが、

安易に真似をするべきではない。
慣れない者は揮発したアルコールを吸いすぎて

気分を悪くしてしまうおそれがあるからだ。

サケトチーズ温泉.png
アルハラ湖.png

アルハラ湖

流れ出した温泉や雪解け水、そして上流から流れてくる川の水がクレーターに溜まって出来た大きな湖。
水にアルコールが含まれている影響か、

この湖で捕れる魚は細菌や寄生虫の心配がなく、

安心して生食できる。
アルハラ湖へと流れ込む川の水にも

湖や温泉同様にアルコールが含まれているため、

冬の低温でも凍ることがない。
上流へと遡った先にある凍らない滝は、

飛沫が空中で凍結することで

ダイヤモンドダストがいつでも見られる

到達困難な絶景の名所として知られている。

フォーサウザンド天文台

公国軍による開拓が進み

本国との交易が現実的な視野に入ってきたころ、

商人たちの求められた物の一つが星系図である。
遠征軍が行ってきたような危険を伴う航海では、

継続的な交易など望むべくもない。

未開地進出を前提としていない交易船と乗組員でも

安定した航海を行うためには正確な星系図が必須、

そしてその制作には

正確に星を読み取れる天文台が必要だった。
星系図の精度を最優先に

天文台の設置場所として目をつけられたのが、

高い標高と澄んだ空気を誇る

フォーサウザンド山である。
星の観察には最適な環境であるこの高山は、

しかし天文台の建築や維持管理という視点では

対照的に過酷な環境であった。
常に必要になる人手を如何にして供給するか、

その問題に対して公国軍が選択したのは、

山を開拓し人が定住できる環境を作ることだった。

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